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2016-11-03-Thu プリロードって何?

_ [バイク] 一昨日、自称サス屋さんの

衝撃的なブログを読んだので、サスペンションのプリロードって何?ということについて書いてみます。

プリロード(pre load)、つまりあらかじめ(pre)掛けておく荷重(load)のことですね。イニシャル(initial)ともいいますが、正しくはイニシャルロード(initial load)でしょうか。

 

フロントフォークの片側を考えてみます。スプリングレートは0.9kgf/mmとします。

ちなみに単位ですが、今の工学の世界ではSI単位ですのでN/mmとするべきですが、昔から馴染んだMKS単位の方が感覚的につかみやすいと思いますので、こちらで表記します。

また、単位がkgではなくてkgfとなっていますが、これは力の単位が正しくはkgfだからです。kgは質量の単位であり、単位としては分ける必要があります。簡単に言うと、1kgfは1kgの重さのものを持つときに手に掛かる力、と考えてください。まぁ、実際のところは同じ値になるのですが(笑)。kgfのfはforce(力)のfです。

 

まず、スプリングレートって何?というところからです。

上に示したスプリングレートは0.9kgf/mmです。これは、スプリングを1mm縮めるときに必要な力を示しています。1mmのときに0.9kgfならば、100mmのときは90kgfですね。グラフにすると青線になります。数式で言うと、(荷重)=(スプリングレート)x(ストローク)です。

 

このままで良ければプリロードは要りません。クルマのセッティングで言うプリゼロですね。

でも、動き始めをもう少し抑えたいという要望が出た場合。ここでプリロードが必要になります。

仮に、バイクの重量が200kgで前後分担荷重が50:50だとします。前輪に掛かる重量は100kgなので、静止状態(空車1G)でのフロントフォーク1本に掛かる力は50kgfです。(ここではキャスター角は無視します)

プリゼロですと、50kgfだと先の数式に当てはめて、50=0.9x(ストローク)で、ストロークは55.6mmとなります。つまりこれが、空車1Gでフロントフォークがストロークする量です。

フロントフォークのストロークが130mmだとしますと、実際に使えるストロークは74.4mmです。これはちょっと少ないと思えますね。もう少しストロークする有効範囲を広げたい。このときに、プリロードが必要になるのです。

 

画像の説明

プリロードを加えるとどうなるか。仮にプリロードを10mm分加えるとすると、グラフは赤線になります。注目して欲しいのはストロークが0mmのところの縦軸です。既に荷重が発生していますね。これがあらかじめ掛けておく荷重、つまりプリロードです。10mm分のプリロードでは、0.9x10=9kgfの荷重が発生します。

先と同じように、空車1Gのとき(50kgf)のストローク量を見てみましょう。フォーク1本に掛かる力は50kgfなので、グラフを読むと、ストローク量が減っていることがわかると思います。プリロード10mmを掛けたときの数式は、(荷重)=(スプリングレート)x(ストローク)+9 となりますので、これに当てはめてみると、50=0.9x(ストローク)+9で、ストロークは45.6です。つまり、プリロードの分だけストロークが平行移動して減ることになるのです。これは、荷重がプリロードの値になるまではストロークしない、ということを意味します。

 

気を付けなくてはいけないのは、プリロードはあくまでも荷重に対する初期位置を変えるだけであって、スプリングの荷重を変えるものではないということです。ここ、勘違いしている人がすごく多いです。

 

具体的に説明します。グラフ2を見て下さい。

画像の説明

青線は、スプリングレート0.7kgf/mm、プリロードは10mm分のグラフです。

仮にフルストロークが100mmで、最大荷重が100kgfだとすると、荷重80kgf足らずで既にフルストロークを使い切っていますね。底付きです。

ここでプリロードをどんどん掛けていくとどうなるか。これが茶色線です。プリロードを43mm分(30.1kgf)ほど掛けて、ようやくフルストロークの位置と荷重が釣り合いました。これで底付きギリギリなのですが、この状態ではプリロードが30.1kgf掛かっていますので、それを超えるまではフロントフォークは動きません。最大荷重100kgfの1/3近くの荷重が掛かってからようやくフロントフォークが動き始めるのです。極めて乗り難いであろうことは容易に想像できると思います。感覚的には動かないサスだと感じるでしょう。

これを解決する方法は、スプリングレートを上げるしかありません。スプリングレートを0.9kgf/mm、プリロードを10mm分(9kgf)にしたのが緑線です。

これならば、動き始めの荷重は9kgfで最大荷重100kgfまで有効に使えますね。この状態になれば、フルストローク近くの車体姿勢を5mm上げたいからプリロードを5mm分掛ける、という手法は有効になります。もっとも実際には、フルストローク近傍はエア反力のほうが支配的なのですが。

 

どうでしょうか。プリロードの考え方がお解かり頂けたでしょうか。

なお、実際のフロントフォークはエア反力が働くため、ストロークと荷重の関係はグラフ3のようになります。

黄線がスプリング、薄い青線がエア、青線が合力です。

画像の説明

 

オマケで書きますが、実際にタイヤに掛かる荷重はどうなの?ということ。

静的な状態。これは単純に前後の分担荷重で決まりますので、200kgのバイクで50:50ならばフロントタイヤには100kgfの荷重が掛かります。これで釣り合っていますので、プリロードの大小はなんら影響しません。

動いている状態。これは少々ややこしくて、車体姿勢による前後分担荷重の変化に加え、加速度も考慮しなくてはなりません。その加速度はサスペンションのセッティングによって変化します。要は、動く勢いが大きければ荷重も大きい、ということなのですが、それは乗り方によっても変化するので、一概には言えません。プリロードを掛けると硬い感じになるので思い切りブレーキを掛けられる(=加速度大=荷重大)という人もいれば、硬すぎて乗りにくいからプリロードを下げた方が思い切ってブレーキを掛けられるという人もいるでしょう。あくまでもケースバイケースです。ただ、瞬間瞬間で切り取れば、フロントフォークとタイヤの荷重は釣り合っているので、プリロードの大小とタイヤに掛かる荷重は関係有りません。

 

更にオマケです。

プリロードを掛けると乗り心地が悪くなるのを体感したことがある方もいると思います。これは何故か。

これは伸び側のストローク(リバウンドストローク)が減るからです。

荒れた路面を走る場合、プリロードが少なければ1Gの荷重以下に減った場合もフロントフォークは伸びて追従しますが、プリロードが多い場合は追従しません。これが乗り心地に影響するのです。

 

なるべく簡単に書こうと思ったのですが、やっぱり長くなってしまいました。文章で説明するのは難しいですね…。こんなモノでも理解の一助になれば嬉しいです。

 

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ ☆MEON☆ (2016-11-07-Mon 10:48)

分かりやすいですね♪<br><br>でも、間違えて理解してる人は多いです。<br><br>サスペンション屋さんにも、スプリングに噛ませる<br><br>スペーサーをアルミで削り出して、BMWのR100RS初期型の<br><br>スプリングレートアジャスターなる商品を高額販売してる店も<br><br>存在していました。<br><br>昨日は家族でテイストに応援に行きましたが、<br><br>鉄の字さん、KANchiさんにはご挨拶出来ましたが、<br><br>タケ×タケさんのテントが無くて少し物足りなかったです。<br><br>来年は自分も走れる予定です。<br><br>九州勢はGS1000の野中さんが表彰台に上がられてました。

_ た。 (2016-11-07-Mon 22:35)

タケタケ、次回は出ます。<br>お互い、頑張りましょう。